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ななさんの推薦文一覧
愚かさと愛おしさとほんの少しのおかしさと

「スーパー呪術大戦」というのは、ストーリーの説明としてはふさわしいけれど、そうじゃない!それだけじゃない!!と叫びたくなる物語。

この物語は悪が世界を制していく。悪のほうが正しい、と主な登場人物たちは思っている。でも、それは善になれなかった故に悪を選ばざるを得なかったことの裏返しだったのではないだろうか。
そんなエピソードが満載で、とにかく人間は愚かで愚かで愛おしいし、どんな状況でも笑い合える瞬間というものはある。終わりがどうであれ、その生き様を見せてくれよ!っていう、そんな熱さと勢いを感じました。
タイトル金蚕
著者浮草堂美奈
価格100円
ジャンルファンタジー
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とにかく続きが読みたい!

主人公は新人なのに即戦力になる女性刑事
探偵役(と思われる)に常識外れで過去のありそうな精神科医
不可解な事件
不思議な夢

ハードボイルドとミステリーとサスペンスあたりがうまく混ざっていて、とにかく続きが気になります!
タイトル零点振動1
著者宇野寧湖
価格100円
ジャンル大衆小説
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青い箱庭から解放されたとして、どこへ行くのだろう
海というひとの力が及ばない存在のすぐそばで生きる、子どもと大人たちの心の物語。

子どもにはこころがある。誰かを憎むことができ殺意を抱くことがあり思いやり愛することができる。彼らには彼らの世界があり、それは決して何かと比較して劣るものではなく、その価値は大人にははかれない。大人に簡単に壊されてしまう彼らの世界は、けれど決して弱いものでもない。
親は親であるまえにひとりの人間で、不完全な部分がありエゴがありときにズルく、ときに子どもを利用することがあり、ときに子どもにつらく当たることもある、でも、それでも子どもを愛している。
そんなことを考えさせられた。

キリさんの作品は読みやすい。たぶん大抵の人が読みやすいというと思う。
でもキリさんの作品の魅力は読みやすさではないとも思う。
この続編の『夏火』の解説(ヒラサキユカさん)に書かれている「人が感じていること、あるいは感じていてもそれに気がつかないことを素早く正確に言語化する能力に長けている〜(中略)〜感情を掬い上げて言葉に閉じ込める才能は特筆すべきものだと思う」が一番しっくりきた。
才能なのかはわからないが、彼女の文章の魅力は確かにそこだろう。
掬い上げた感情を、彼女の中で濾過して彼女だけの言葉に、文章にして、それを誰にでもわかりやすく表現している。

最後に、私がこの小説を読んで一番感じたのは「救い」だと思う。
たぶんこれは、誰かのための救いの物語なのではないだろうか。
子どもたちのための、あるいは大人たちのための、どうしようもなかった、どうすることもできなかった何かへの。
タイトルミニチュアガーデン・イン・ブルー
著者キリチヒロ
価格600円
ジャンルJUNE
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苦しさの先にある光を思う
『ミニチュアガーデン・イン・ブルー』の続編。だけれど、雰囲気が異なる。
青い箱庭の中で育まれていた幻想的な雰囲気が薄れ、現実が押し寄せてくる。

高校生活、新しい人間関係、広がっていく世界、閉じたままではいられない自分。
それは成長していくことかもしれない。良い変化、と呼べるのかもしれない。
けれど、自ら変化を望んでも、変化を強いられても、受け入れても、苦しい。
好きな人のためになることをしたい、手を差し伸べたい、その思いを汲みとりたい、でも、そうなれない。自分のエゴに気付きながらも振り回される。感情ばかりが先走って言葉が行き詰まる。自分自身ですら、自分の気持ちがわからない、本当の気持ちがわからない。そんな苦しみを味わいながら、経験しながら、成長していく時間。
そして、そんな現実と隣合わせで、過去が揺らめく。
過去から逃れられないまま、振り回されながら、それでも、自分にかけられた願いのかけらを手にしていく。
いろんな苦しさを乗り越えて、生きていく。
未来なんて知らずに、ただひたすら、その時その時の精一杯で、今を生きている。
間違えたかもしれない、傷つけたかもしれない、どうにも取り返しがつかないかもしれない、それらを放り出すことなんてできずに、ただ抱えて、抱え続けて、必死にあがく。

とても苦しい物語だったと思う。
それだけに、苦しさを乗り越えた先にある輝きにほっとする。
終盤、苦しさを乗り越えた少年たちに明るさが戻ることが嬉しかった。
『夏火』では、物語の中のいろんなことが、苦しさが、すべて解決するわけではない。
けれど、彼らは彼らなりに、成長する。

生きていることを、命があることを、名前があることを、そこに込められた願いを、いろんなものを抱きしめたまま、物語は続く。
タイトル夏火
著者キリチヒロ
価格800円
ジャンルJUNE
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愛より深い海をみた
『ミニチュアガーデン・イン・ブルー』『夏火』の続きであり最後。
最初の『ミニチュアガーデン・イン・ブルー』の雰囲気はほとんど残っていない。『夏火』の、現実が押し寄せてきた感覚が、そのまま、より明確になって、痛みとして迫ってくる。

高校3年生
進路
受験
別れ

記憶の扉をすり抜けて入り込んでくるキーワード。
こんなことが自分にもあった、そんな風に思い浮かべる前に、涙が落ちてくる。

『ミニチュアガーデン・イン・ブルー』が過去の物語で、『夏火』が成長の物語だったとするなら、『はばたく魚と海の果て』は未来へ向かう物語だ。
未来へ向かうために、痛みに耐える物語。
『夏火』の苦しさは、何に向かうのか、どこへ向かうのかわからない苦しさだったように思う。
『はばたく魚と海の果て』は、先が見えている。受験という、そして、別れという、確かな未来へ向かって、その未来へ向かうために痛みに耐えている。
詰め込まれていく毎日。1日、1時間、1分1秒、なくなっていく時間に、削り取られていく。
渦中の人間も、それを見守る人間も、痛い。
そうして、耐えて耐えて耐え切った先にあるものは、なんだろう。
慣れ親しんだ箱庭から解放されて、どこへ行くのだろう。


ここまで、『はばたく魚と海の果て』を最後まで読み終えて、三部作『blue』について思った。

高校生の少年たち。
高校生を終えて大人になった親たち。
高校生を終えることなく海に消えた少女。

高校生は、子どもから大人へと向かう時期、大人になりたい時期、子どもでいられなくなる時期。

『blue』のことを考えると、どうしても涙腺が緩む。この感想文を書きながら、何回泣いたかしれない。
私の高校生は、どう転んでも間違ってもこんな青春っぽい青春ではなかったので共感などとは痴がましくていえない。
それでも、痛みがある。刺すような痛みだったり、柔らかい痛みだったり、鈍痛だったり。それは物語がどうのこうのではなくて、その中に散りばめられた感情が、記憶を刺激するのだと思う。
そういう、作家なのだ。

だから、たくさんの人に、読んで欲しいと思う。
読んだ人の人生の中に、痛みがあったことを知ってほしい。
そして、その痛みを、許されてほしい。
タイトルはばたく魚と海の果て
著者キリチヒロ
価格1000円
ジャンルJUNE
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人を愛することの尊さ
この物語は、子どもの性的虐待を大きいテーマとして取り扱っている作品である。
が、テーマとは別に、この物語の魅力は主人公〈まお〉の愛情だと思う。

〈まお〉は、幼児期に性的虐待を受けていた子ども〈なあ〉を、そうとは知らず、弟のように愛す。
結果としてそれは〈まお〉にとっては悲劇だったのかもしれない。
彼女はそれによってたくさん傷つき、苦しんでいく。彼女自身も、大切に思う〈なあ〉を傷つける。お互いにお互いを傷つけて苦しんで、それでも〈まお〉は〈なあ〉の手を放すことができない。逃げても逃げきれない。〈なあ〉が手を伸ばせば、彼女はそれを突き放すことができないのだ。
それは良い結果を生まないかもしれない、余計にお互いを傷つけるだけかもしれない。
けれど、何度も何度も選択を迫られるたび、自分自身が傷つけられる可能性を天秤にかけて、それでも最終的に〈なあ〉を選び続ける彼女を、私はとても尊いと感じた。
自己犠牲とはまた違う。傷つきたくないという恐れと怯えを抱えながら、間違った結果を生むかもしれないと思いながら、それでも愛した人を信じようとする〈まお〉の心は、抱きしめいほど愛おしい。

「なあは、あたしが育てたんだから!」

この言葉に込められた思いを、読んでみてほしい。
タイトル淅瀝の森で君を愛す
著者まるた曜子
価格500円
ジャンル大衆小説
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優しさの雪が降る
お話はもちろん、表紙イラストや装丁、すべてを含めて一つの物語であり本であり、余すところなく楽しめるようになっている作品で、とにかく大好きです。

辛いことや悲しいことがあっても、むしろあったからこそ、人は優しくなれることがある。誰かの幸せを願うことがある。自分がつかめなかったものを、誰かに託すことがある。自分が辛かったからこそ、誰かには、幸せになってもらいたいと願うことがあるのだと、そう感じた物語。
タイトルゆきのふるまち
著者くまっこ
価格450円
ジャンルファンタジー
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本をおしゃれに、本を大事に。
くまっこさんの「クマの豆本製造ライン」シリーズは1から持っていて、本を作るときには毎回読み返している、私にとっては本作りのバイブルといっても過言ではない存在です。当然3も発行当初からずーっとほしくてたまりませんでした。

今回はブックケースの作り方が掲載されているということで、特にそれが楽しみだったのですが、それ以上に中綴じ本のアレンジに大興奮でした!
ブックケースもそうなのですが、ゴムバンドをつけたり、リボンで結んだり、お手紙のように封筒風にしたりというのは、本をおしゃれに着飾るのはもちろんですが、本を大事に大切にしようという気持ちが感じられて大好きです。
それから、くまっこさんはいろんなアイテムをお持ちで、こんなものが本作りに使えちゃうんだ、という発見が。きっと日頃からかわいいなぁと思うものや、本作りに活かせるかな〜と思うものを集めておいたりされてるのかなぁと想像しています。

本作りをされてる方にはもちろん、本に限らず何かを作るのが好きな人ならば、ぱーっと見てるだけでも楽しいと思います。ちょっとアレンジしたら他の創作物にも生かせる素敵なアイデア本ですよん。
タイトルクマの豆本製造ライン3
著者くまっこ
価格700円
ジャンルそのほか
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歪なやさしさにふれて
17の小説と詩が掲載されているこの本は、とてもリアルで、とても歪でした。
リアルなのは、きっと著者が実際に体験されたことを書かれているせいではないでしょうか。実際に起きたことを書いている匂いがします。
歪なのは、世界そのものであったり、人の一部であったり、心の在り方だったり。
ソヨギという服だったり、白い袋がくらげだったり、花を食べたり、冷凍みかんを書くことだったり、色の捉え方だったり、自転車が落下する絵だったり、他人の家の植木鉢に興味を持ったり……
いえ、それを歪といっていいのか、本当のところはわかりません。
人によってはそれは歪でもなんでもないかもしれません。
ただ、例えば常識とか、社会とか、そういう一般的といわれるものと比べると、歪な気がするのです。
この歪さの正体を辿っていったとき、この本は、物語というよりも、思想のように思えました。
一番強く感じたことは、世界が怖いところであるということ、けれども、やさしくあってほしいと祈っているということ。
2011年、東日本大震災の年に書かれた作品ということも関係しているのかもしれません。

この本に、著者の気持ちに、ふれてほしいと思う一冊です。
タイトルsoyogui, その関連
著者泉由良
価格500円
ジャンル純文学
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完成版が待ち遠しいです!
夢と現実が混ざり合うような作家の男性。
古書店で働く女性・須那子。
ーーそれぞれの日々。

大正時代あたりをモチーフにした疑似世界が舞台の2つの物語が、それぞれ異なる雰囲気の文章で綴られています。
どちらもとても素敵で、その時代のロマンみたいなものを感じました。

お話は謎ばかりがひらひらと雪のように降り続いており
珈琲人形とはなんなのか(表紙の珈琲に納得しました)
男性が出逢ったすな子は誰なのか
古書店で働く須那子は偽春画師と出逢いどうなるのか
そして2つの物語はどう繋がってゆくのか。

早く完成版が読みたいです!
タイトルすな子へ(無料試読版)
著者泉由良
価格無料
ジャンル純文学
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母と子をつなぐ歪みを断ち切るために
「母」と、母と娘の関係性について深く考えさせられる作品でした。

子は、多かれ少なかれ親の影響を受けるもの。
特に、父が外で仕事をし、母が育児を含む家のことをするのが当たり前の環境では、子が母の影響を受けやすいのは当然のことです。

そんななか、「母」は、望むと望まざるとに関わらず、「母」であることを強制されていく。
社会からも、家の中からも、そして何より己自身から。
それが歪みを生むのでしょう。
本作はその歪みを丁寧にすくいとりながら、子の視点でそれを見せており、それゆえにサスペンスとしても楽しめる作品になっています。
物語の終盤、主人公が母から受けていた印象を、彼女の付き合っていた男性が主人公から感じていたというシーンにはぞっとさせられると同時に、母と娘の、見えないつながりを感じました。
良くも悪くも母と娘(子)の間には絆(といっていいかはわかりません)があって、それを断ち切ることは、とてもとても難しいことなのでしょう。

ラスト、主人公の独白からは、母への理解はみえても、彼女と母の今後の関係性がどうなるのかはみえない。
けれど、だからこそ、その先は、読者が考えるべきものなのでしょう。
私は、この物語を、主人公と同じ立場で読みながらも、娘を持つ母として、自分はもっと違う絆を娘たちとつなぎたいと、叶うならば、いつでも娘たちからは切れる絆を結んでいきたいと思いました。
タイトルお母さん
著者鳴原あきら
価格500円
ジャンル大衆小説
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