推薦者一覧
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容 (@詩架)(1) 綺鱗舎(2)

きよにゃさんの推薦文一覧
店員さんと現実世界で信頼関係を築くには!?
 自分の性的嗜好が同性だと気付き、一世一代の覚悟で男性向け風俗店に来た在宅勤務の祥(しょう)。
 そこでコウという青年にサービスされる立場になり、リードの巧みなコウに惹かれていく。次回必ず店に行くと約束していたある雨の日、コウが同級生らしき若者とはしゃいでいる姿を目撃してしまう。
 自分の知らない、コウの学生らしい姿を見て、祥は「自分は知り合いですらない」と落ち込んでしまう。いっそのこと、店で働いていないコウを見ればあきらめられるのではないかと思い至り、コウの通う大学で確かめようとするが、そこでコウに見つかってしまい──。

 とても読みやすい文章で、文字がすっと頭に入ってきます。
以前、実駒さんの小説を読んだ時にも感じたのですが、「人に読ませる」ということを前提に作られている文章・お話だなぁ、と思いました。

 冒頭からはじまるラブシーン(Hシーン)はサービスたっぷり。
 その後、コウのことをなにも知らないけれど、あれこれ想像して幸せな時間を過ごすところから、コウの普段の学生の姿をみて疎外感を覚えるシーンの落差が大きいです。
コウといい雰囲気になり、夢を見ていたのにいきなり「ただの客と店員」だった自分たちの現実を突きつけられてショックを受けるところ、とても共感しました。お話が上手な職業のひと(美容師さんなど)と話すと、私も錯覚しますから。
祥が「コウと友達になりたかった」と自覚するまで、長い道のりだったなぁ、と思いました。
 全部読んで見ると祥はダメダメですが、まっすぐで応援したくなるキャラ、(もちろん、コウも必死だった、と後でわかります)世間に出ていないせいなのか、孤独で懸命に愛・友情をほしがる祥を応援したくなります。
 体のつきあいから始まる友情というのもあり!?なエンドですし、コウが乗り気なのところが、BL好きとしては嬉しいです。

 この二人の行く先が、幸せなものでありますように!
タイトル【R18】君とデートをしてみたい。
著者実駒
価格500円
ジャンルJUNE
詳細書籍情報

吐息が聞こえるようなリアル、両性愛に惑う少年の成長物語
 目立つ名前と男女の双子という理由で、中学時代にいじめを受け、親友の春馬にしか胸のうちを明かせない伏姫海吏(ふせひめかいり・主人公)。
 その親友にさえ、英国に残してきた「好きな子」が男だと打ち明けられないでいる。双子の姉の祈吏(いのり)にもまた、幼い頃から思慕を抱き、いずれはどちらかを選ばなくてはいけなくて――。
 思い詰める海吏の姿がピュアで、思春期独特の切羽詰まった焦燥感が伝わってきます。女子高校生の喋り言葉をそのまま書き写したような台詞、化粧品やお菓子、整髪料がまじった女の子特有の甘ったるい匂い、金切り声のような生徒達の嬌声など「今この日本に存在してそう」なリアルを感じさせる描写が巧み。
 なんといっても「彼氏」のマーティンが魅力的。「好きだ」と言う海吏に、「きみは寂しいだけなんだよ」と頑なに拒むストイックさが切ない。
 頁数の多さを感じさせないほど、内面描写が濃く、掌編とおまけペーパーが嬉しい一冊です。
 後日談的な続編「MY SHOOTING STAR」・恋愛成就編「あたらしい朝」もオススメです。
タイトルジェミニとほうき星
著者高梨 來
価格800円
ジャンルJUNE
詳細書籍情報

滅多に口に出来ないお菓子を丁寧に食べるように、少しづつ読みたい本。
 高校生の桐緒が付き合っている人は、うんと年上のジャズピアニストだ。
 敬語で話す桐緒に、荘平さんはコーヒーを飲みながら色んな話をしてくれる。笑う時は顔をくしゃくしゃにして笑う少年のような人。
 ある時はバーバパパの絵本について語り、ある時はバレンタインのチョコを一緒に選び、ある時は呼び捨てにし合ったり、ある時は百年後の自分たちの未来について語ったり。
 そういうふたりで過ごす大事な時間──親友のマキちゃんに言わせると「ノロケ」以外の何者でもない──を切り取り、数編のお話が成り立っている。
 機知に富んだ会話に「武勇伝のような夏の思い出話をする」同級生など現実を感じさせる描写の細かさが特徴的で、読者を女性向けのファッション誌をのぞいたような、おしゃれで夢見心地な気分にさせてくれる。

 ところで、二十五の男性と付き合っている女子高生と聞くと、ぞろっとしたつけまつげに短いスカートを穿いているイメージがわくが、「ピアニストの恋ごころ」の桐緒はまったく違う。
むしろクラスの女の子たちが年上の彼氏のことを「得意げにブランドもののアクセサリーを見せびらかすみたいに自慢」する中、居心地悪そうにしている、おとなしくて清楚な子だ。
 壮平さんは桐緒のことがどうしようもなく可愛いと思っているし、桐緒は桐緒で、きちんとした身なりのこぎれいな壮平さんを、クラスの誰にも見せたくないほど夢中になっている。
 いつも家に来てくれて悪いから、と彼氏である壮平がSuicaをチャージしてくれる話があるように、たぶん学校帰りに彼氏の家に寄っているのだろうと想像されるが、二人はいたって清い交際で、ミントタブレット味の淡いキス止まりだ。
 周りを固めるキャラクターも生き生きしている。教師と付き合っているという噂がある木崎さん、そんな彼女が調子の悪いときに男子に威勢のいい啖呵を切って黙らせた、桐緒の親友のマキちゃんなど。
 マキちゃん視点は、やや辛口だけど、恋していない人からみた「壮平さん」の姿がわかりやすくていい。

 2014年度発行の本に、二編の書き下ろしを加えたリニューアル版。



タイトルピアニストの恋ごころ
著者高梨 來
価格600円
ジャンル恋愛
詳細書籍情報

暗喩に満ちた、ダメ男の逃亡記。
 東京から逃げるようにして海辺の温泉街に来た郡司と、彼にまつわる不思議かつ奇妙な出来事。
 主人公郡司の視点になりきって一気に読んでしまいました。
 BL要素あり、しかも雄っぱいものと聞いていたので、ついついそんな期待をしてしまったけど、淡々と現在を受け止め、不思議な出来事や過去に戸惑う「青年の半生」が描かれているなぁ、というのが第一印象。
郡司が作中で吐いてしまった、食べた覚えのない「クラゲ」や、姉の生き霊だと思っていた少女の正体など、暗示的な部分はあるけれど、そういうのが分からないまま読んでも問題無く面白かったです。

 ラジカセを捨てるときに「生き物を捨てるような気持ち」になったり、姉に「かわいそうな子」と言われ続け、姉とセックスこそしていないけれど、ほぼ情夫のような(郡司も言っているように、ヒモというのが正しい)ふれ合いをしていたり、薬の副作用でしょっちゅう左胸を気にしなくてはいけなかったり。
 郡司は周りを見えなくしよう、鈍感であろうとしているけど、とても繊細な感性の持ち主なんだなぁ、と思います。あと、脇役との絡みも面白かったです。大学生七美や、神父・バンド経験のあるアラン。特にアランとは最後のほう、「乳汁を出さない自分に早晩興味を失うでしょう」と別れを匂わせる文があっただけに、おかさんから今後もこの二人は関係を保つと聞ほっとして嬉しかったです。

 BL的な読み方ではアランがヒーローに相当します。
「マジレスされた」と言ったり、郡司が切りつけられた時に神父対応をするアランがお気に入りです。
お話しの終わり頃「ホテル行こ」と言ったあと、「あ、言う順番間違えちゃった」というアランもとてもかわいいです。これを言われて堕ちない受けはいないでしょう・・・・・・!
 テキレボアンソロ三冊目「猫」に寄稿された「飴と海鳴り」も郡司が主人公で、少し泣けます。
タイトルぎょくおん
著者オカワダアキナ
価格400円
ジャンル大衆小説
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笑いと萠えがぎゅうぎゅうに詰まっている、BL展開ありのコメディ。
晴れて付き合うことになった七生と雅人。
だが、ダブリンで短期留学中に雅人が買った媚薬のせいで、七生が子供の姿に戻ってしまい──!?

「体は子ども、頭脳はおとな、か」
「事件が起きないといいんですが……」
「すでに起こっているから問題ない」

「出会い編」は現在売り切れとのことですが、登場人物紹介や後書きなどで補完できますし「七生と雅人は付き合う寸前だった」と覚えておけばOKです。
主人公の七生は大学職員で鴨や猫とナチュラルに話せる特技がある26歳。誰に対しても敬語で(動物にも!)、七生がいるとその場が和んでしまうという癒し的な存在。
頬を摘ままれて「ふええ」と、およそ26歳とは思えない泣き声を出すけれど、そんなところも含めてかわいらしい。
一方、七生の恋人・ツンデレ気質の雅人は、モデルをしている外見と裏腹につっぱっている感じ。(でも七生のことがかわいいと思って、要所要所で七生に迫ります)。
ふたりの「出会い編」に続くこのお話は、雅人の兄・朝雛誠人(まこと)が七生に言い寄る男として出現。さらに媚薬を飲んでしまった時に泣きつく魔法使い「ことわりさん」や、彼の使い魔の黒猫・ねこきちさんなど、新キャラが数多く登場します。

このキャラたちの個性的なことといったらありません。
仕事の付き合いでは礼儀正しく紳士的な態度だったのに、七生に貸しを作るや否や「じゃあ、一回ヤらせて?」と柄悪く豹変する誠人。
普段は七生を「あんた」呼びしているけれど、誠人にちょっかいを出されたと知って「誰にも見せないように」車を走らせる雅人。(このシーンは、男の嫉妬を表現してていいなぁ! ときゅんきゅんきました)
ちいさくなった七生に「ずいぶん可愛くなったね、きみ」とことわりさんが言う時にも雅人は嫉妬していて、七生は皆に好かれて可愛がられています。
家の内装なども「無印良品で買いそろえたようなシンプルさ」と想像しやすい表現で描かれていて、想像力があまりない私にも分かりやすかったです。

ほかにも、
肩から落ちるシャツ姿の七生がかわいい!
二人の男から同時に求愛される受けが美味しすぎる!
ねこきちさんの毛に、七生と同じように埋まりたい!

……などなど、笑いと萌えが満載のキヨムさんワールドへぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
楽しい時間をお約束しますよ!
タイトルよくないおしらせ
著者壬生キヨム
価格800円
ジャンルJUNE
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絶対に行きたくない!(笑)
旧・満州に再度行きたいという祖父のため、写真を撮るため中国に渡った著者・りりあさん。
だが、言葉もほとんど通じない・観光地化されていない土地なせいか、その旅は過酷です。
ざっと一例を挙げると……。

・トイレにドアがない!
・銀行で両替をしようと試みるとポカンとされる。あとで偉いさんたちが出てくるが、紙幣をコピー(犯罪)したりする。
・スーパーに行くと、万引き対策でバッグを鍵付き袋に入れられる。当然会計時にもめることになる。
・掃除されていないホテル。
・突然繋がらなくなるネット。(友人が余計な言葉を書いたせいかも、と疑心暗鬼に陥るりりあさん)

とくにいろんな場所で「汚ぇ!」と明記されているとおり、中国の衛生状態はかなりのもののようです。
乗り換えのため訪れた韓国の空港で、清潔さに感動してトイレの個室を激写してしまうのもやむをえないかと思われます……。
(のちに、そんな精神状態ってどうよ、と冷静になっています)

そんな中、道を聞いただけなのに案内をしてくれる三兄弟に出会い、帰りはその母親が迎えに来てくれるというエピソードが挟まっていたのは僥倖でしょう。中国人民は優しいのだ、としんみりきます。

りりあさんの軽くてツッコミ多めの文章が、悲惨な旅を笑いに変換してくれます。
写真も数多く収録されており、田舎の中国の実情を知るには、あるいはとんでもない旅行体験をした人の実録をみるためには必見の書でしょう。
タイトル中華人民共和国に満州国の面影を見に行く
著者りりあ
価格600円
ジャンル評論
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