推薦者一覧
N.river(1) あまぶん公式推薦文(7) きよにゃ(2) なな(3) にゃんしー(2) ひざのうらはやお(1)
ひじりあや(1) まゆみ亜紀(2) まるた曜子(2) オカワダアキナ(3) 宇野寧湖(1) 宮田 秩早(9)
犬尾春陽(1) 高梨來(6) 桜鬼(4) 新島みのる(2) 壬生キヨム(5) 正岡紗季(3)
想詩拓(1) 第0回試し読み会感想(2) 凪野基(8) 白昼社(1) 服部匠(6) 泡野瑤子(4)
鳴原あきら(5) 柳屋文芸堂(2) 容 (@詩架)(1) 鈴木薫(1)

凪野基さんの推薦文一覧
ファンタジーという名の薬と癒し
双子の姉と、留学先のイギリスに残してきた同性の恋人との間で揺れる心を軸に、人間関係で傷ついた心が癒やされ、他者を受け入れられるようになる少年の変化を描く、青春BL小説です。

人に傷つけられたものを回復するのもまた人、海吏は親友の春馬や姉の祈吏、恋人のマーティンとの交流を経て自信を取り戻してゆきます。
描かれる人間関係は箱庭的で温かく、ともすれば結論ありきのファンタジーだと読めるかもしれません。けれど、作者の來さんはそのような読まれ方をされることも含めて、この「ジェミニとほうき星」を執筆されたのではないかと思うのです。
何か疲れたな、しんどいな、そんなときに安心して没頭できる優しい世界を、否定されることのない完全な肯定の世界を。そんなふうな気配りが感じられます。
フィクションの世界で英気を養い、再び現実に帰ってこられるようなひとときの休息。そんな物語です。
タイトルジェミニとほうき星
著者高梨 來
価格800円
ジャンルJUNE
詳細書籍情報

一歩ずつ、先へ。
トラウマを乗り越えて自立をこころざす聖羅の足取りや葛藤を丁寧に描いた物語。トラウマの克服というのは、過去の記憶やそこから連なる今をぶちのめしたり否定したりすることではないのですね。

本編にも登場するマッサージのように、滞りをなくすとか、ほぐすとか、そういうことに近いのだなあと感じました。トカちゃんと牧野先生がすごく好きで、読んでいる途中はずっとハラハラしていたので、ラストにはほっとしました。足元が豊かな土になったなあ、と思えて。

フィクションなのですけど、「母」の描かれ方に考えさせられました。私は幸運にも呑気な学生時代を過ごしたけれど、娘や、友だちがこういった問題に直面したとき、自分の立場から逃げ出さずにいられるだろうか、怖くもあるのです。完璧な対応など望むべくもないけれど、せめて逃避や責任を子どもたちに押しつけるようなことはしないでいられたらなあと思います。今この本を読めて良かったです。
タイトル白蜥蜴の夢
著者宇野寧湖
価格800円
ジャンル恋愛
詳細書籍情報

フェアな日常ミステリ
鍵をなくして閉め出された、ところから始まるフェアな日常ミステリ。ミステリ成分とともにニヤニヤ成分もたっぷりです。みちるのざっくりした性格が可愛く、何だかんだ言いつつそれを放っておけないインテリヤクザ(※彼氏)もかっこいい。装丁もお洒落で、土佐岡さん作品の導入としておすすめです。
タイトル鍵が見つかりませんお月様。
著者土佐岡マキ
価格300円
ジャンル大衆小説
詳細書籍情報

華やかなりし夜
12世紀ヴェネチアを舞台に、亡国の王と商家の娘が出会い、取引し、ともに時間を過ごして結ばれる、甘々らぶらぶの歴史ファンタジー。FT好き、歴史好き、吸血鬼もの好きな方に宮田作品入門としてお勧めできる一冊です。

大作ですが、導入部の邂逅から、信頼をめぐるやり取り、絢爛な夜の住人と堅実かつ質素で現実的な昼間の生活のギャップ、当時の風俗や文化、失われた国の過去語りなど、ストレスのない展開で一気に最後まで連れて行かれます。まさに満漢全席。すごく贅沢な読書体験でした。

聖書を暗唱する吸血鬼ガルシアと従兄弟のアシエルのぶっ飛んだところを、シルヴィアの生活感あふれる可愛さが埋めてくれる(そしておじショタことヘルメス君が適宜ツッコミをくれる)関係がともかく面白いのでそれだけでぐいぐい読めます。クライマックスの仮面祭のシーンは圧巻!
タイトル祝祭 カルネヴァーレ
著者宮田 秩早
価格500円
ジャンルファンタジー
詳細書籍情報

確かなものはどこに
世界をわたる旅をする少女フィスチェと相棒のぬいぐるみ・シオン。彼女が旅する世界は色鮮やかで美しく、けれどどこか儚く脆く、フィスチェが旅立つと世界ごと消えてなくなりそうな印象を受けました。

フィスチェやシオンだけでなく他の登場人物たちにも曰くがありそうですし、探し物は本当に見つかるのか、とどきどき。装丁が!トワイライトPPがすごく素敵。ゆめまぼろし、って感じで絶妙でした。
タイトル星と幻夜のセレナーデ
著者神奈崎 アスカ
価格500円
ジャンルファンタジー
詳細書籍情報

あたりまえのその先に。
あやかしと人との時間を描く短編集。甘くて(一部塩対応)きゅん成分もたっぷり、なんだけど両者の差異を思うとほんのり切ない。過ごす時間が違う、文化が違う、世界が違う。
別々に暮らすのが道理かもしれないけれど、理屈ではない、心の強さと熱さにうるっときます。

ところで、「異界の食べ物を口にして異界に取り込まれる」のは浪漫だと思います!しあわせなカップルに幸あれ。
タイトルふたごもりの家
著者良崎歓
価格300円
ジャンルファンタジー
詳細書籍情報

漢字の成り立ちを思う
糸偏の漢字をテーマにした短編集。
その性質のせいか、人と人との繋がりや関係性を密に描いたものが多く、淡々とした語り口ながら、細やかな感情描写が心地よかったです。「縫」が好きです。
タイトルいと - へん【糸 - 偏】
著者砂原藍
価格200円
ジャンル掌編
詳細書籍情報

性癖だけに留まらない濃密な6編
ジャンルを問わず、たくさんの同人アンソロジーが発行されるこの時代にあって、もうなんて言うか、コンセプトの勝利だと思います。
ニッチ!そして、ドツボのテーマでなくとも興味を抱かせる「あー何となくわかる」感と執筆陣。
作風を知っている方が多く参加されていることもあり、とても楽しみにしていました。

それぞれの作者さんならではの作品で、どれも切り口は違えど「美形と鼻血」とともに描かれるテーマが鮮やかです。身も蓋もないことを書くと「美形が鼻血出してるだけとちゃいますよ」と。
それらを纏めあげるZARIさんの美麗表紙も必見です。

全作へのふんわり感想は個人ブログに掲載しています。ご参考まで。
http://bluegray.self.jp/2018/08/14/bikeitensei/
タイトル美形と鼻血アンソロジー「美形点睛」
著者青波零也・泡野瑤子・オカワダアキナ・黄鱗きいろ・丹羽夏子・宮田秩早・ZARI
価格700円
ジャンルそのほか
詳細書籍情報