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 この頁の投稿者:

   - 河野宏子




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05.07.2011 post

 「朝」


ビタミン剤を齧りながら夜が
引き上げて行くのを見ている
五時半、夏のはじめ、ガラス、つめたい窓ぎわ
からす、声だけがする

枯れますかもう
うたも言葉も街も
夜になると際だつ、それは
切実であればあるほど
遠くへと手を伸ばす、まだだ
もっと、産声が
已(すんで)の所で無音に消され

見れば
待ってもいない明るい空
飲み下して溶けるビタミン剤
今日が配られて行く気配 広がって ほら
待ってもいない明るい空だよ



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11.03.2011 post

 「脈拍」


記そうとしている

祈る直前のわたしの
両の手のひらの空間にある
あの気配のことなんかを

神様という便利な言葉は使わない
本能とか直感とか言って説明を省かない

捕まえようとしている
言葉からずっと遠いものを

今しにたくない

桃源郷でとてもレアな蝶に手をのばす時の
昆虫少年のように
息を止め気配を消し
ただ内側に脈拍を充満させて



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10.02.2011 post

 「日曜夜9時の住宅街で自由を」



もはや欲しくもない自由を駆ける
日曜夜9時
インザ、住宅街、三十路も半ば

かつて机を並べた友だちはみんな
子どもが食べたシチューの器を洗ったり
夫のワイシャツのボタンを付け直したり
妻へのサービスとして風呂を洗ったり
していることだろう
愛のメンテを死ぬまでやってろ
そうしてこの国を保て、て

手に余る
もはやひとかけらも欲しくはない自由
自由のロードを自転車で駆ける
いやはやまったくだな
自称芸術家は孤独になりたがるが
わたしに言わせれば詩がわたしから離れてくれない
詩はぽぉーんと放出される
こんな温かな灯が満ちる住宅街にな
見たくもないので駆けるのだ
まるで老いた書道家の墨汁の飛沫みたいに軌跡が

”時代のせいにするのは、弱虫のすることさ”



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09.04.2011 post

 「台風クラブ」



夫が帰宅する頃に焼きあがるように
ノルウェー産のさばをグリルに入れる
午後11時
さばの脂がしたたる、とおい海から、
大阪の片隅の台所へと、また下水へと、
流れ込み いずれ 雨が 流す 今夜

酸性雨よりもっと気がかりな雨だよ

台風クラブって青春映画 思い出しながら
あんまりに昔のことで笑ってしまいそう
もう帰れないよあたしたち、いろんな意味で
(去年の今頃には違った意味で読んだだろう一節だ)

冷蔵庫の中の食材の多くが外国産であることに
もはや何の抵抗も無い夫とあたしだ

あたしたちはたぶん今夜も
外国に移った友人たちの話をする
あたしに至ってはこの国のコッカすら歌えないが
雨に濡れた夫の髪を拭うことや
目の前のグリルから
焼き目の美しいさばを取り出して
食卓を囲むことはできる

ねぇあなた、台風クラブって知ってる?



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07.31.2011 post

 「常夏」



シャワーから上がったら
巨体の恋人が
腰にタオルケット巻いて
ウクレレを奏でていた

8月の手前、日曜の朝、気温32℃、晴れ、無風
涼しい音でウクレレは鳴る

恋人は人間ハワイ

砂浜のようなベッドに並んで腰掛ける
今日も常夏 サンダルを履いて
どこへ行こう

君は人間ハワイ
心配は要らない
いつでもそこが
わたしの帰る場所

さぁ今日は、どこへ行こう




(過去の投稿も間もなく再掲致します。少々のあいだお待ちになって下さいませ)




──(c) 河野宏子 ──


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