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   - 恣意セシル




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01.21.2012 post

 紙の花



退屈なので目の焦点をはずす遊びをしていたのです
そうしたら突然 白いコピー用紙の水面から
藁半紙色の花の影がちらつき 現れました

立ち昇るパルプの香りは
あの日の あの 人気のない教室の匂いと似ています

内緒で吸った煙草の煙
制服の 青臭くて湿った気配
人知れず繰り返した口づけと
その奥に分け入って知った秘密の味

あなたは今 どこでどうしているのでしょうか
私は今 ここでこんな 他の誰とも見分けがつかないような人になって
世界の端っこのぎりぎりにしがみついています

輝きに目が眩むようにおざなりにしてきた日々は
洗いたてのYシャツのポケットに忘れられた映画の半券のよう
ぼろぼろに擦り切れて 何の手がかりにもなりません

苛まないでください
自分を粗末にできたのはあの頃だけで
今の私には私の心さえ自由にできない

思い出さないでください
卒業アルバムの中で無邪気に笑っている私の写真
ただそのままのイメージで

何もかものその口の中に噤んでほしい

気づけば私は泣いていたので
白いコピー用紙を破って 破って ばら撒きました
粉雪のようにそれは舞って でも溶けて消えてはくれないのでしょう
千切っても 燃やしても 拒絶をしても
きっと 私の影でそっと 咲き続ける

私を忘れないでと あの声で囁くように



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08.17.2011 post

 エニグマ・アンチ・ヘッドフォン



空耳はいつも高周波の形
モノラルで脳髄に到達する

それは決まって左耳
右手で叩き落す決まり
最早 様式美

君の声はいつも逆位相の模倣
不自然な静寂を伴って忍び寄る

それは決まって出来損ない
右耳へ誘い込んで袋小路
最早 暗黙美

だからヘッドフォンは使わないのだ
イヤホンをつけて外して
世界の姿を切り替えて

執念とも 妄念とも
好きに呼んで構わない
ナノ単位の振幅一つ 見逃さない
愛情である必要はない
契約という信頼で呼応する

回りくどく暗号を張り巡らせた
ふたりだけの これは恋




(過去の投稿も間もなく再掲致します。少々のあいだお待ちになって下さいませ)




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